谷戸の自然だより 今年の11月から12月の気象と自然の様子

 今年も秋が短く、一カ月ほどしか秋を感じられませんでした。10月まで残暑が続き、12月になると、一気に真冬になりました。谷戸では毎日霜がおりています。台風がなかったせいもあり、例年に比べ雨が少なく、谷戸全体で水不足の状態が続いています。ススキの穂が出るのが遅れ、11月になってから穂が出て来るススキもありました。

●11月から12月の谷戸でよかったこと心配なこと
よかったこと

 湿地の奥で、ノウサギのフンを大量に見つけました。数年ぶりのことです。まだ健在のようです。小段谷戸に設置した「インセクトホテル」が満室?になっています。虫が利用できるよう、竹筒などを束ねて設置してありますが、ハチが幼虫のため、筒の中に産卵して入口を泥や枯草でふさいであります。ハチの種類によっては人家の隙間などに巣を作るので、古民家の代わりになるようなインセクトホテルを設置してあります。夏だけでなく冬も使われていることが分かりました。北日本で雪が早めに降り始めたためか、12月になってから冬鳥の数が増えてきたようです。管理棟前の「上の池」にはシベリアからやってくるカモの仲間、


マガモ(♂)


キンクロハジロ(♂)
 

クロハジロが来ました。キンクロハジロは3年連続で同じ鳥?が来ているようです。谷戸の湿地でヤマシギが見られたそうです。数年ぶりの記録になりました。

心配なこと

 オギやススキに巣を作る、カヤネズミの調査を年に2回実施していますが、今年の秋は巣が一個も見つかりませんでした。一年おきに増減を繰り返すようなので、来年に期待しています。湿地の奥まで水不足の状態が続いており、ヘイケボタルの生息地や、ヒキガエルの産卵場所も乾き始めています。田んぼの「深田」といわれる区画はいつも水が豊富ですが、今年は水があまりありません。山からの水(絞り水)が減少しているのでしょう。

●谷戸の林 40年前と今 その1

 40年前に言われていたことが、現実にはその通りになっていないことがたくさんありますが、その一つが谷戸の林の変化です。コナラやクヌギの雑木林(落葉樹)がシイやカシの原生林(常緑樹)に戻っていくとされていましたが、必ずしも順調に変化していません。大きくなりすぎた木は、風や大雨で根ごと倒れ、市内のいたるところで、崖崩れをおこしています。その跡地には、落葉樹ではあっても、雑木林にはなかった(駆除されていた)、ミズキやカラスザンショウ、アカメガシワなどの落葉樹が育ち始めています。このような場所は、最終的には、モミジやケヤキの林に代わっていくそうです。そのせいか、数年前から谷戸のあちこちで、


近年増えてきたモミジの幼木

モミジ(野生種のイロハカエデ)の幼木が育ち始め、紅葉が目立ってきています。がけ崩れの跡地をどうするか、増えてきた落葉樹(カラスザンショウやミズキ)をどう考えるか、現場の視点で考えていければと思います。