谷戸の自然だより「今年の7月から8月の気象」
猛暑と水不足で辛い夏になりました。各地で大雨の被害が出る中、鎌倉だけは、7月18日以来、まとまった雨がありません。8月下旬の時点では、田んぼの水が枯れて、ひび割れができている状態です。40年近く谷戸の田んぼを見ていますが、これほどの水不足は経験したことがありません。昨年以上の猛暑で全国的に40度近い気温が当たり前になっています。鎌倉は涼しい方ですが、33度を超えると作業が厳しいです。猛暑の影響なのか、アオマツムシ(木の上でリーリーとうるさく鳴くコオロギの仲間)が例年より一週間ほど早く鳴き始めました。
●7月から8月の谷戸でよくなったこと心配なこと
よくなったこと 今年から設置した「インセクトホテル」に虫たちが入居しています。写真のように、竹筒や丸太にあけた穴にハチが巣作りをした後、穴をふさいでいます。人を刺すハチではなく、アオムシやクモを幼虫の餌にするために、穴に運びこむ「狩バチ」と言われているハチの仲間です。昨年あたりから、谷戸の生きものが急激に減少していますが、タマムシ、コクワガタが増えているように感じます。近年のナラ枯れ(コナラの木が枯れていく現象)で、弱った木や枯木が増えたため、幼虫が育ちやすくなったのかもしれません。
心配なこと 今年の夏はセミが少ないと言われています。ヒグラシ、アブラゼミの鳴き声が少ないです。幼虫が育つのに数年かかるので、近年の猛暑の連続が、セミの幼虫に影響を与えたのかもしれません。もしそうならば、来年もセミが少ないかもしれません。
●草取り、草刈りと昆虫
夏は草との闘いですが、谷戸の田畑で作業することが自然保護につながります。市内ではほとんど見られなくなったコオロギやバッタ、例えば、タンボコオロギ、ヤチスズ、クマコオロギ、コバネイナゴ、ショウリョウバッタモドキ、クルマバッタなどが生息しています。これらは、昔からある里山の田畑にしか棲んでいません。家庭菜園や畔をコンクリートで固めた田んぼ、ビニールで覆われた畑では守れないのです。谷戸が鎌倉中央公園として整備されるとき、元からある田畑を残すことができたこと、市民が参加して、昔ながらのやり方で農作業を続けたことが貴重な虫を守っています。コオロギやバッタは、畑や畔に、足首より低い草がはえている場所で暮らします。多少は除草が行き届かないこと、土手の草を刈った後にまた草が再生してくることが、無駄なようでも実は生きものを守ることにつながっているのです。